続NHK

おとなり日記』というのは大変に便利な機能でして似たキーワードを含む著述をピックアップできます。今回のNHKのアレについて他所での著述を読み比べると大変におもしろい。
感情的なものやイデオロギーに即したもの(政治的な話になるとなんともまあコチコチの石頭になり切ることができるのか!驚くばかりだ)を除去し,問題点を整理すると以下の通り
安倍氏他の圧力があったかどうか?
そもそもNHK幹部が議員に会ってしまったことが間違いの元だったと思われる。圧力をかける発言があったかどうかは絶対に水掛け論になるため判らずじまいになると思われますが,そもそも政治家と会談してしまえばそういう圧力がかけられたと思われても反論できないですし,『会談』ですから政治家のほうも何かしら発言はするでしょう。仮にこのときの安倍氏の発言が
『期待しているから頑張ってください』であっても圧力をかけたと必ず言われるでしょう。互いの立場がそのように思われても仕方ない立場ですから。こういう羽目にNHKが陥ってしまったのは政治家と対する時のためのマニュアルがなかったからでしょう。事実関係はともかくとして客観的に見たらどう思われるか。報道機間として読者視聴者の立場に立って考えるという態度が欠けていたと思われます。
・NHK幹部の発言と記事どちらが正しいのか
そもそもメモを取るな録音も駄目というスタイルの取材というのも異常な気がしますが,言質を取られないためにそのようにしたということなのでしょうか。だったらその際の発言を直接記事に起こすのは無理ですから何かしらの証拠を残せる形で裏を取らなければならなかったハズです。それを怠ったまま記事にしてしまったというのは如何なものか。これだけデリケートな(天皇問題はタブーなんだし)問題を扱えば必ずや後に色々問題が出てくるわけですから,頑として反論を否定できるだけの物的証拠や根拠を残すべきでした。人の口に戸は立てられないという格言。新聞社なら痛感して居るはずですがどうなんでしょう。
もっとも先に述べたとおり,報道機関に携わるものとして,録音やメモを取らせるぐらいのことはすべきでした。正確な報道のためには必要不可欠です。
もうひとつ『取材方法を明らかにできない』から駄目という理由でこれらの資材の開示がされていません。そもそも内容でなく方法を秘密にするというのは解せません。これでは誘導尋問で誤ったことを言わせたという疑惑や,取材そのものが不正であったのではとの懸念を打ち消すことができません。色々あるでしょうが,取材方法そのものも公正に行うべきではないでしょうか。
このような態度が横行すると,国民からの取材に対する協力を失い記事を書く能力を失う懸念があります。忘れてはならないことは,取材は読者が事実を知るための手段であり,また取材は市民の協力があってはじめて可能になる情報収集方法だということです。
・報道機間のありかた
この点になるとどのブログも感情的な意見の陳述になっており整理された論述が見当たりません。
新聞社などが一斉に政府と距離を置くべきだという意見を述べていますが,たしかに一定の距離は必要です。
ですが政府だけではなくあらゆる組織から距離を保ち取材対象を遠方から観察し記録し,そこから得られたフレームに取材対象に近い部分から肉付けをする。そういう態度が必要でしょう。あまりに客観性を欠いた記事はそもそも読者の信頼を得ることができません。
・報道機間ってなんだろう
新聞の場合紙面の内容が偏っていますね実際。例えば記者やコラムニスト同士で意見の食い違いをぶつけ合う。そのような記事や論説は全く見られません。新聞というものがそういうものなのかもしれないですが,学術論文誌では全く異なる意見や理論を同じ号の記事に載せています。当然高い水準での議論が交わされています。例えば朝日新聞には絶対に『原子力発電所建設を推進する』というコラムは載らないですし(原発があれば資源に起因する外交摩擦が避けられるじゃないか 等の視点で書いたってもいいではないか)。
他の新聞もそうなのですが全面が全部同じ論調の記事や論説で埋め尽くされているのはある意味非創作系の出版物としては奇妙なことです。新聞とはそのようなものなのでしょうか。私にはわかりませんがそういうものだとして受け入れられています。
となると複数の新聞の記事を比較するしか手がないんですね。ただ以前述べたとおり,日本の報道機間は 『事件を伝える』のではなく『意見を伝える』ことに終始しているため客観性を求めるのが難しい。そこでNHKに『客観性』を求める風潮が出てきたのでしょう−しかし冷静に考えてみれば,他の報道機間が為し得ていない『客観性』をNHKだけがモノにできるはずはないということにも思い当たるわけなのだが−
そう考えると民放や新聞などの報道機間の駄目さ加減がNHKに対する幻想を増大させたわけでありNHKの成り立ちを考えればむしろ政府系報道機間だという位置付けでも別段不思議はないわけでそこのところが議論から脱落しているように思えます。