NHK

NHKと朝日新聞がノーガードの打ち合いを続けている。両方とも総力をかけて敵を叩き潰すといった様相を見せており放送・紙面を大幅に割いて戦っている。
これだけの放送や記事を見るにつけメディアの持つとてつもない力の大きさに恐怖を感じた。
もし片方がメディアでなくそこらにある企業や官庁,個人であったらどうだろう。反論は封殺され弁護するものもなく苦もなくひねり潰されてしまうだろう。

それはさておきどうも旗色が悪いのは朝日新聞の模様だ。尤も既に信頼を失いつつあるのだが。
全体的に感じるのは毎度のコトながらの『結果ありき』の報道内容である。特定の方向からだけ見せる−具体的に言えば『リベラルな』『左派の』といった形容詞がつく方向だけの切り口である。おもしろいことに,このような偏った方向からだけの検証でなされる文章が許されるのは,創作であるものを除くとどうやら報道記事に限られる話のように思えてくる。

まず関係者の発言が正しいのかどうか。例によって言った言わないの水掛け論で終わらせてしまう感じがするが,ここまで強硬に主張する以上取材テープをばしっと出していただきたい。というかその義務がある。証拠を残せぬまま色々記事を書いているのなら出版業として失格であろう。報道云々言う以前の問題である。例えるのなら領収書を出さずに,タクシー代を請求しているようなものであろう。普段はニュースソースの秘匿ということでその手のデータは示されないのだが 取材を受けた側が反論している以上その手の論理は通用しない。

もう一つたいへんに危惧している点がある。結果ありきで報道していないだろうか。記者が特定の言葉を言わせたいが為に誘導をする,心理的錯誤を起こさせるなどである。今回は『政治的圧力を感じたかどうか』がカギのようであるが,回答を既に記者が用意していてそれを言わせるためだけの質問でなかっただろうか。そこが改善されない限りこの新聞社には将来はない。

新聞記事を読む側の立場から言わせてもらえば,欲しいのは『客観的な事実』である。
残念なことに国内の報道機間は尽く『事実を伝える』ことではなく『自分の意見を伝える』ことにあまりにも執着しすぎていてもはや報道機間として機能していない感がある。
我々ができる唯一のことは複数の機間から出された記事を比較検討し報道機間の主張という成分を洗い落とし事実部分を抽出するといったきわめて面倒な作業で身を守るということだけである。

そもそもが,この番組が放送に値するものかどうなのか。
被告人欠席,弁護士も不在,片側だけが言いたい放題を言うという『裁判』があるとすれば,それはただの『私刑』である。法治国家のきわめて重要なシステムの名を冠して勘違いを誘導させる代物の名をそのまま垂れ流しにしてしまうのは如何なものかと。(例えるのなら,『レギュラーガソリン』という名前の重油を販売するようなもの。この『法廷』は全然法廷でないどころかそもそも正確な検証工程さえも踏んでいない代物である)。少なくとも教育目的である番組であるのなら,そういった誤解を招くものは流してはいけないし(仮に弁護人が居なくても裁判ができるなどという誤解が生まれたらそれはそれで深刻な問題である)正確で判り易いそういうものを流すべきであったと思う。